旅立ち
1年前。
彼は25歳。
「僕はどちらかというと大手企業よりベンチャーで実力を試したい。成果を上げたい。」
2人で早朝から松本で仕事を行なっている時の合間の会話。
このまま、今の会社にいれば、福利厚生もしっかりしている大手企業で安泰。
見た目から真面目さが漂う、4月に新入社員で入社したばかりの人の言葉とは
思えなかった。
最後に私がキャリアコンサルタントだと打ち明けた。
それまで年上の同僚という感覚で話をしていたのだろう。
でも、それがよかった。
初めにコンサルタントだと言ってしまうと、この彼の場合、
普段からカッコつけで、言葉を選んで話をする。
本音が出てこない。
今年の秋にまた仕事を一緒にする機会があった。
「その後どう?ベンチャー計画。」
「あ、そっか、話してなかったですね。・・・そのうち報告しますね。」
この言葉で、何か決心したんだと感じていた。
彼は26歳になっていた。
「あの時相談して、この間も話して・・・あの報告しますねっていうのが今回の結論です。」
「そっか。この1年、ううん、入社した時から、この会社をじっくり観察して出した
結論なんだね。」
何も言わなくてもがんばってきた彼を私は知っている。
人生に確かな答えはない。
数学のように答えが決まっていたら、何の学びも無く、成長もないだろう。
何年か後、更に成長した彼に会ってみたい。
この間最後の言葉を交わした。
「何かあったらいつでも連絡して。」
彼は新たな地へ旅立った。
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